それは夢ではなかったようだ。2012/11/24 22:18

今日、老人病院に入院している祖母の見舞いに行ってきた。

祖母は、91歳。と、病室のベッドの上に貼ってある紙には書いてあった。

戸籍上は12月生まれとなっているから誕生日が来ていないことになっているけれど、実際は夏に生まれているので満92歳、先日亡くなった女優の森光子さんと同じ、大正9年生まれだ。

もう、だいぶ前から、「矍鑠として」とは、程遠い。
祖母が入院したのは、今月のこと。
社労士試験の合格発表の日で、私はその日から風邪をひいてしまったので、今日までずっと見舞いには行かなかった。

久しぶりに会った祖母は、かなり衰えていた。

入院した当初は、認知症が進んで、見舞いに行った家の者から様々なことを聞いていた。

ここ2、3日は、体力はともかくとして、意識の方は一時の混濁よりははっきりしているようで、今日は、私こともちゃんとわかっていた。

祖母は、「昨日、(このフロアの)廊下から階段から、ギッシリ人がいた。何か、宗教のお祭りをしていた。昨日は、何の日?」と、尋ねてきた。

「昨日は、11月23日で、勤労感謝の日だから、金曜日だけど旗日だよ。今日は、土曜日だから、私は会社が休みなんだ」といったことを答えた。

祖母は、それから何度か、「昨日、何か宗教のお祭りが行われたようで、廊下にも階段にもたくさん人がいた」という話を繰り返した。

病院は、静かで、物音が反響するし、祖母のベッドから廊下や階段の様子を観察することは、できない位置にある。

私は、祖母が夢の中の話か過去の記憶の話をしているんだろうと思った。先にきいいた話だと、時間もごっちゃになっているようだったし。
混濁と、覚醒の間を行ったり来たりしていて、ちょっと混濁側に行ったのかな、ぐらいに思っていた。

だけど、同行していた母は、意見が違った。
同じ階の、誰かが亡くなったのではないかという。
それまでふさがっていた病室が、今日来たら空いたようだから。だから、ピンときた…と言った。

なるほど、病室で患者の誰かが急変したら、医師や看護師が、病室に駆け込む。このとき、医療道具を乗せたワゴンをガチャガチャ押してくるかもしれない。いよいよ危篤となったら、その患者の家族が呼ばれて、ドヤドヤとやってくる。何十人も来なくても、5、6人も駆けつけて来れば足音とざわめきは相当廊下で反響しただろう。

してみると、それは、夢の中の話ではなかったし、昔の何かの記憶が昨日のこととして思い出されたわけでもないみたいだ。
いや、「宗教のお祭り」とか、廊下や階段に「ぎっしりと人が集まっていた」とか、多少、想像を現実と思っていたところはあるにせよ。

病室の中は、祖母に取り付けられた尿を採る管と溜めておく袋があって、袋には700か800mlくらい、溜まっていた。そして、その尿のものなのか、変な臭いがしていた。

1時間ばかり病室でたわいのない話をして帰った。
たいていのニオイというものは、鼻が慣れると気にならなくなるものだけど、病室の臭いはいつまでも馴染まず、鼻についたままだった。

切ないなあ。いつか、こんな日が来ることは分かっていたけれど。

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